紫陽花(アジサイ)の別名を教えてください。
これがその9種類です。
- 四片/四葩(よひら)
- 七変化
- 手鞠花(てまりばな)
- オタクサ
- 八仙花(はっせんか)
- またぶりぐさ
- 止毛久佐(トモクサ・シモクサ)
- 額花(がくばな・がくのはな)
- 本紫陽花(ほんあじさい)
9種類もあるなんて、驚きですね!
なかには俳句の季語で使われたり、和菓子の商品名で見かけたりしてお馴染みの名前もありませんか?
ここでは、さらに
- 9種類ある紫陽花の別名の由来
- 英語の紫陽花の別名
こんな情報を草花が好きな私がまとめます。
紫陽花の別名【全9種類】
あらためて、もう一度、紫陽花(アジサイ)の別名を一覧でご確認ください。
- 四片/四葩(よひら)
- 七変化
- 手鞠花(てまりばな)
- オタクサ
- 八仙花(はっせんか)
- またぶりぐさ
- 止毛久佐(トモクサ・シモクサ)
- 額花(がくばな・がくのはな)
- 本紫陽花(ほんあじさい)
これだけバリエーションが多いのは、アジサイが日本原産で何千年と日本人にとって身近な花だった証拠ですね。
それでは、ここからそれぞれの紫陽花の別名の由来を解説していきます。
紫陽花の別名その1.四片/四葩(よひら)
四片と四葩はどちらも「よひら」と読みます。
俳句において「四葩」は紫陽花の別名として使われ、夏の季語になります。
この2つは表記は異なりますが、どちらも同じ意味があるんですよ。
- 四片:花びらが4枚ある
- 四葩:花びらが4枚ある(「葩」は花びらを意味する)
日本人にとって身近な桜や梅、桃の花びらは、5枚。
基本的に花の「花びらの枚数」は、3・5・8・13・21枚と決まっています。
しかし、紫陽花の花びらは4枚で物珍しかったことから、この別名が付いたと言われます。
※紫陽花の「花」だと私たちが認識している部分は、正確には「がく」に当たります。
紫陽花の本当の花はガクの中心にある小さな部分です。
紫陽花の別名その2.七変化
紫陽花の花の色にクローズアップして付けられた別名が「七変化」です。
紫陽花の花色の変化は土壌や時間経過で変わります。
それぞれの由来を分けて解説しましょう。
由来その1.土壌で色が変わるから
紫陽花は植える場所によって、花の色が変わるのは有名な話ですね。
その変化の秘密は、土壌の性質にあります。
- 酸性の土壌:青くなる
- 中世/アルカリ性:赤くなる
日本や降水量が多く、土のアルカリ分が流されて酸性になりがち……。
そのため、多くの地域で紫陽花は青くなりますが、一部の地域(アルカリ性の土壌)では赤くなります。
そんな花の色がコロコロ変わる様子から、昔の人は「七変化」と呼んだようです。
由来その2.時間経過で色が変わるから
紫陽花の花の色は開花から咲き終わりまで、刻一刻と変化していきます。
その色の変化を時系列で並べるとこうなります。
- 黄緑色
- 青色
- 赤色
- 緑色
紫陽花の花の色を決めるのは、アントシアニンや補助酵素で作られる色素。
花の最盛期は色素が多く作られるため色が濃くなりますが、次第に色素が分解されて薄くなり、色素が失くなると元の緑色に戻って花が終わります。
歌舞伎の「早替り」のように短期間でこれだけ花の色が変化するのは珍しいところから、「七変化」の別名が付いたとしても納得ですね。
紫陽花の別名その3.手鞠花(てまりばな)
手鞠花(てまりばな)の「手鞠」とは、芯に糸やゼンマイ綿を巻きつけた日本古来の遊具。
手で地面についてバウンドさせて遊ぶためのボール、またはその遊び自体を指します。
紫陽花のふっくらとした球体の花が手鞠に似ているところから、この別名が付けられました。
なお、現在では西洋アジサイのひとつに「てまりてまり」という品種も存在します。
昔も今も、紫陽花の花はコロッとしたボール状で可愛く見えるため、「鞠」の名で呼びたくなる気持ちはよく分かりますね。
紫陽花の別名その4.オタクサ
「オタクサ」というカタカナの不思議な響きの別名は、なかなか興味深い由来があるんですよ。
世界百科事典ではこう説明されています。
シーボルトはアジサイをHydrangea otaksaと名づけたが,この〈オタクサ〉は彼の愛人だった長崎丸山の遊女〈お滝さん〉(本名楠本滝)に由来する。
■引用:オタクサとは – コトバンク
シーボルトとはご存知、長崎の出島にやってきたドイツ出身の医者・博物学者。
医者のイメージが強いですが、博物学者でもあったため、まだ外国に知られていない日本の動植物を観察し記録にまとめる作業も行っていました。
日本の植物のなかで紫陽花を特に気に入ったシーボルトは、その学名に楠本滝さん(通称お滝さん)の名前をつけたんですね。
「おたきさん」が正確に発音できなかったので、オタクサになったのでしょう。
彼の著書『日本植物誌』の中では、Hydrangea otaksaの名称が今でも確認できます。
なお、現在の長崎には「おたくさ」という銘菓が存在します。
紫陽花の別名その5.八仙花(はっせんか)
八仙花(はっせんか)は、中国での紫陽花の呼び名。
そもそも「八仙」とは、道教の8人の仙人を指します。
七変化と同じく、8人の仙人のように様々に色を変える様子からこの名が付いたと言われています。
現在ではほとんど聞きませんが、中国での呼び名が紫陽花の別名として通用した時代もあったのでしょう。
なお、明月院(別名「あじさい寺」)がある鎌倉のお菓子メーカー「豊島屋」には、「八仙花」という羊羹菓子が存在します。
紫陽花の別名その6.またぶりぐさ
室町時代前記の書かれた歌学書『言塵集』(ごんじんしゅう)では、紫陽花を「またぶりぐさ」と呼んでいます。
言葉の響きからなんとなく下品な印象を受けますが、その直感は大正解!
その当時、紫陽花の大きな葉をトイレットペーパー代わりに使っていたところから、この名が付けられたそうです。
紫陽花の別名その7.止毛久佐(トモクサ・シモクサ)
一部の地域では、紫陽花のことを止毛久佐(トモクサ・シモクサ)と呼んでいました。
「下の草」と言い換えられるように、またぶりぐさと同様、紫陽花の葉をトイレットペーパーとして使っていたのが由来です。
古い家の庭をはじめ日本中のあちこちに紫陽花を見かけるのは、その花の美しさを好んだだけではなく、こんな理由もあったのかもしれません。
紫陽花の別名その8.額花(がくばな・がくのはな)
額花(がくばな・がくのはな)は、ガクアジサイの別名(異名・別称)。
紫陽花のなかでもガクアジサイだけを指す場合は、この別名が使われていたようです。
山口誓子さんという方の俳句にこんな一首があります。
美しや蒼黒き溝額の花
紫陽花の別名その9.本紫陽花(ほんあじさい)
本紫陽花(ほんあじさい)は、私たちが「あじさい」と呼ぶ花の総称。
ガクアジサイではない「普通のあじさい」の別名です。
意外な事実ですが、実はガクアジサイが原種であり、いわゆる「普通のあじさい」はガクアジサイの栽培種に当たります。
ガクアジサイと区別するための別称が本紫陽花となるわけですね。
紫陽花の別名と誤解されている2つの名称
これも紫陽花の別名?
と勘違いされている名称もあります。
それがこちらの2つ。
- 紫はしどい(ムラサキハシドイ)
- 摩訶不思議(まかふしぎ)
紫はしどい(ムラサキハシドイ)
あるテレビ番組で、紫陽花の別名は?という3択クイズが出されました。
その3つの選択肢のひとつに「紫はしどい」があったため、これを紫陽花の別名と勘違いする方もいたようです。
しかし、それは間違い。
紫はしどい(ムラサキハシドイ)はライラックの別名です。
ライラックの花の色が紫で、小さな花が集まって咲くところから紫陽花の一種だと誤解する人もいるとか。
摩訶不思議(まかふしぎ)
摩訶不思議もテレビのクイズから生まれた誤解。
「紫陽花の別名は?」という3択クイズの選択肢のひとつとして、摩訶不思議が出されたんですね。
正解を確認しなかったか、記憶違いをしている方もいらっしゃるようですが、摩訶不思議は紫陽花の別名ではありません。
紫陽花の英語での別名
紫陽花の英語名は「hydrangea」(ハイドレンジア)。
ギリシャ語の「水」と「容器」、「水の器」を語源とします。
学名は「hydrangea macrophylla」であり、「macrophylla」は大葉を意味します。
英語圏での別名についてはいくら検索しても見つからないので、存在しないようです。
英語に詳しい方でご存知の方がいらっしゃいましたら、コメント欄でお教えください。
まとめ
紫陽花には美しいものから「え?」と思うものまで、全部で9種類もの別名があります。
最近の新築の家は洋風が主流なので、あまりにも「THE日本風」な紫陽花は敬遠されがち……。
それに代わって、西洋アジサイ(アナベルやシュガーホワイト)が人気なのは仕方ありません。
ただ、今回、紫陽花の別名をすべて知ることで、ガクアジサイや本紫陽花の魅力を再発見した私です。
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