俳句でたまに見かける「冴え返る」の言葉。
私は「頭が冴え返る」とか「一瞬で空気が冴え返った」なんて風に使っていましたが、実際、この言葉は季語だったんです。
そこで今回は
- 冴え返るの俳句での意味と使い方
- 俳句ではいつの季語?
などを解説します。
「冴え返る」の俳句での意味と使い方
goo辞書さんのお世話になって、まずは言葉の意味から確認します。
■さえ‐かえ・る〔‐かへる〕【冴え返る】 の意味
1.光や音などが非常にくっきりとあざやかである。「月の冴え返る夜」
2.春になっていったん緩んだ寒さがまたぶり返す。《季 春》「一本の薄紅梅に冴え返る/虚子」
3. 頭の働きが、非常によくなる。
4.いったん衰えたものが、また盛んになる。
引用:goo辞書
なるほど、私が思っていた「冴え返る」のイメージはこんな感じです。
更に、季節を表現している言葉としての意味も知りました。
春になって、暖かくなってきた日が続いていたかと思っていた次の日、なんだかすごく冷え込む日があることを思い出しました。
あの日に使うべき言葉だったのですね!もっと興味がでてきましたよ。
「冴える」と「返る」の意味もあらためて調べてみた
私は知らない言葉があるとその言葉を作っている漢字をバラバラにしてみます。
そうすることで、なんとなくその言葉の持つ意味合いがわかったりすることがあるんです。
たまにまったく意味が違うものに遭遇することもありますが、それもまた一興ですよね。
分解するとこうなります。
「冴え返る」=「冴える」+「返る」
まずはお得意の辞書で、「冴える」から調べてみます。
さ・える【×冴える/×冱える】 の意味
1. 寒さが厳しくなる。しんしんと冷え込む。
2.くっきりと澄む。はっきりと見える。
3. 楽器の音などが、濁りがなく鮮明である。
4. 色が鮮やかである。顔色や表情についてもいう。
5. 頭の働きやからだの調子などがはっきりする。
6. 腕まえや手際などが鮮やかで優れている。
7.(多く打消しの語を伴って)ぱっとしない。満足できない。
引用:goo辞書
続いて「返る」も辞書引きします。
かえ・る〔かへる〕【返る/▽反る】 の意味
1.表であったものが裏になったり、上であったものが下になったりして、ものの向き・位置が反対になる。裏がえる。ひるがえる。ひっくりかえる。
2.一度変化したものが、前やもとの状態になる。
3.一度手を離れた物が手元に戻る。もとの所有者に戻る。
4.こちらからの働きかけに対して、相手が反応する。
5.年月・季節が一巡して再びその時になる。年が改まる。
引用:goo辞書
「冴える」という言葉には「寒さが厳しい」や「冷え込む」という意味に加えて、輪郭がはっきりするような鮮明さを表現する意味を持っていますね。
そして、「返る」には「元の状態に戻る」という意味があるということですから、それを併せ持った「冴え返る」という言葉の意味がすっきり頭に入ってきた気がしますよ。
「冴え返る」はどんな場面で使う言葉?
「冴え返る」の意味を辞書で調べてみて音や光、そして空気などが張りつめて透き通った感じを受けました。
そこには澄みきった様子も加えたいですね。
そしてさらには、切れるような冷たい温度まで感じられます。
もう一つは温暖から一転して寒冷へ一気に引き戻されるという様子がはっきりイメージできます。
春の季語で使われるように、冬の寒さから日に日に暖かくなって、だんだんと春の陽気が感じられるようになったと思っていたら、キンッと空気を張りつめたような寒さがぶり返して襲ってくる日の様子を見事に表していますよね。
私のイメージでは冬から春の始まりに使われるのがベストだと思いました。
次は季語として使われている一例を見てみましょうか。
「冴え返る」俳句でいつの季語?
季語とは、季節を表していて、その言葉によってどんな季節を表現しているのかがわかる言葉ということです。
もうお分かりのように冴え返るは「春の季語」です。
実際に「冴え返る」が季語として使われている俳句を見てみましょう。
俳句を見るだけで、なんの解説もいらないこの分かり易さですよね。
「冴え返り」は初春を意味する季語で、それを2度繰り返しています。
私なりに解釈してみます。
春の陽気に安心したと思いきや、また厳しい冬の寒さが戻り、今度こそ本格的な春が来たかと思ったのに、やっぱりまた凍えるような冷たい風が吹く日がくる。
そうして、暖かい日と寒い日が繰り返されて、やっとの思いで春の季節も半分までやってきました。
こんな感じですが、どうですか?
早く来てほしい春なのに、1歩進んでは2歩下がるような思わせぶりな春の季節に焦らされている気持ちを表しているように思いました。
どうですか?
私、この俳句とても好きなんです。
もう、なんの説明もいらないかと思うんですが、一応私の解釈を聞いてください。
ユーモアのセンスがまさに冴え返っていますよね。
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こんなときこそ!「冴え返る」がしっくりハマるパターン
冴え返るという言葉は現代でもちゃんと使えます。
むしろ使いこなせればとても英知に満ちた表現者として一目置かれることでしょう。
【冴え返るがしっくりハマる時】
1.光や色などが鮮明にくっきりと澄み切っている状態を表してみます。
「遠くの海の色まで青く冴え返っていることでしょう」
2.意識がはっきりして、頭の回転がすごく良くなる表現をしてみます。
「私の脳裏にあの日のことが冴え返ってきています」
3.衰えかけたものが、また勢いをとりもどす状態を言い換えます。
「桜の開花も進んでいた最中ですが、刺すような冷たい風を伴って寒さが冴え返ることでしょう」
いかがでしょう?
冷たくて鋭い様子や、穏やかだった状態から一気に勢いをとりもどす寒気の様子などを表すといいですね。
まとめ
言葉の種類をたくさん知っていればいるほどいいですよね。
「冴え返る」は「寒戻り」・「余寒」・「春寒」とも言い換えることができます。
ですが、冴えるという言葉の意味が持つ「鮮やかさ」や「切れの良さ」を踏まえて、凍てつく寒さを表現するにはこれを超えるものはないと思いました。
是非、使ってみたい言葉ですよね。
早く暖かくなってほしい今日この頃ですが、この「冴え返る」を使える日が少しは来てくれてもいいよ?という、気分に今なっております(^^♪
コメント
初風
多くは新年の季語として俳句を作っているようですが、平安時代の和歌では、秋の初めに吹く風を意味していたようです。
初風や回り灯籠の人いそぐ 几董
この句は初秋の句とのことです。
どのように考えればよいのでしょうか?
初風は秋の始めに吹く風を昔は指していたようですね。それが現在では元旦に吹く風を指すように変わってきたようです。専門家ではありませんので断言はできませんが、現在の解釈に倣って冬の季語とするのが正解ではないでしょうか。