山吹は植えてはいけないって本当ですか?
種をつけない種類の山吹があるため「種がつかない=子供ができない」との連想が生まれ、「子孫が途絶える」と昔は信じられていました。
あくまで縁起担ぎなので、気にしない人は植えて大丈夫ですよ。
春になると「ハッ」っとする鮮やかな黄色(ゴールド)の花を咲かせる山吹。
庭にあったら、さぞかし華やかになると思いますが、「庭に植えてはいけない」という風のウワサも……。
そこで今回は
- 山吹を植えてはいけない理由
- 山吹を植えたくなる長所
を解説します。
10代のころから草花に興味を持ち、いまでは趣味がガーデニングの私におまかせください。
山吹を植えてはいけないたった1つの理由
山吹を植えてはいけないと言われる理由は、庭に植えると
と信じられていたためです。
八重の山吹は実をつけない
なぜそんな迷信が生まれたかというと、「八重」の山吹が実(タネ)をつけないため。
そもそも山吹には
- 一重(原種/基本種)
- 八重(突然変異/園芸種)
の2種類が存在します。
山吹 (Kerria japonica) 一重と八重 pic.twitter.com/6HF1ngWqBg
— かめちゃん (@kamechan_chibi) August 20, 2022
一重は実がなってやがてタネをつけるものの、八重は実(タネ)をつけない特性があります。
一般的に家庭で栽培されていたのが八重の山吹だったため、「山吹=実がならない」との認識が定着したと言われています。
「山吹=実がならない」説は太田道灌の逸話から
この和歌をご存知でしょうか?
七重八重花は咲けども山吹の実の一つだになきぞ悲しき
この和歌が一般に浸透し、「山吹=実がならない」の認識が定着したのは太田道灌のこんなエピソードが元です。
太田道灌が鷹狩りに出かけたところ、天候が悪化し雨模様に。
そこで古びた農家に立ち寄り
「雨をしのぐ箕(みの)を貸してください」
と頼むと、農家の若い女性は、一枝の山吹を差し出すのみ……。
女性の不可解な行動に憮然とし、その場を立ち去る太田道灌。
城に帰って家臣にそのことを話すと、上記の和歌を踏まえて
「山吹には実がない=我が家には箕がない」
ということを暗に伝えたのではないですか?と指摘されます。
太田道灌は己の無知や浅慮を恥じて、それ以後、和歌の勉強に励むようになりました。
このエピソードは太田道灌の数ある逸話のひとつとして後世に語り継がれています。
※箕は現代で言うところの雨合羽やレインコートのようなもの。
※太田道灌は、15世紀の武将で江戸城を築城したとして有名。
八重が種をつけない科学的な理由
八重の山吹(八重山吹)が種を付けない理由は以下の通り。
- 雌しべが退化
- 雄しべが花弁に変化
この退化(変化)によって花粉ができないため、花は咲くものの種(実)がつかないという性質になったんですね。
このため、八重山吹は「挿し木」か「株分け」によってしか繁殖できません。
種をつける一重の山吹なら関係ない
種をつけない八重山吹は「子孫繁栄を邪魔する」と信じられていますが、種をつける一重の山吹ならば関係ありません。
子供の誕生を待ちわびる夫婦の家に山吹を植えたいなら、一重の山吹が適しているでしょう。
縁起や迷信を全否定する人なら、もちろん八重山吹を選んでもかまいませんが。
一重の山吹は手に入る?
八重山吹のほうが園芸種として一般的。
町中のホームセンターや園芸店では八重山吹の取り扱いはあっても、一重の山吹は滅多に見つかりません。
山吹は日本原産のため、山に分け入れば自然に生えている場合もありますが、勝手に持ってくるのは環境破壊ですし、マナー違反。
どうしても欲しい場合はネット通販という手段に頼りましょう。
検索すると、このようにたくさん見つかりますよ。
シロヤマブキという選択肢も
シロヤマブキという白い花を咲かせる山吹もあります。
厳密に言うと山吹とは別種の花木ですが、非常に似ているため同じ仲間だと誤解する人も多く、一般家庭の庭でもよく植えられています。
「子供ができない」とする昔からの言い伝えを気にする方は、シロヤマブキを選んでもいいかと思います。
山吹を植えたくなる3つの長所
「種がならない=子種に恵まれない」と知っても、それでも山吹を庭に植える人がたくさんいます。
それは花が美しいという理由以外に、こんな3つの長所があるからです。
- 日陰でも育ちやすい
- 手がかからない
- 花言葉が良い
「山吹色」の言葉が生まれるほど、山吹の黄色い花は日本人を昔から魅了してきました。
でも、見た目以外でも良いところがこんなにあるんですよ。
日陰でも育ちやすい
山吹は日陰も元気に育ち、むしろ日陰のほうが好きなくらいの花木。
ですから、庭の大きなシンボルツリー(シマトネリコ等)の日陰になる根本にスペースを埋めるために植えるのにも適しています。
手がかからない
山吹の栽培の注意点はほとんどなく
- 水やりは不要(真夏の高温期は除く)
- 肥料も不要
- 暑さ・寒さに強い
- 低木で剪定は不要
- 病気や害虫の被害が少ない
など手がかからず、初心者にも向いています。
花言葉が良い
山吹の主な花言葉がこちらの3つ。
- 金運
- 崇高
- 気品
花の色が「黄金色」に見えるところから「金運」と付いたと言われています。
風水でも黄色は金運アップのラッキーカラーですので、庭に植えれば収入がアップしたり、思わぬところから財産が転がり込むかもしれません。
まとめ
山吹を植えてはいけないと言われる理由は、八重山吹が実をつけないせいでした。
庭木が実をつけないから、人間の子供も生まれなくなるとは、ずいぶん飛躍した言いがかりだと思います。
昔の人は科学的な知識がなく自然現象に恐れを抱いていたため、ささいな縁起担ぎを重視して生きていました。
その時代の名残といえる言い伝えですから、気にしないで植えられてはいかがでしょうか。
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