ある日の昼下がりのことです。
午後からの仕事を始めようとデスクに向かっていたら頭上から声をかけられました。
「卯月に間に合うようにしてちょうだい」
顔をあげると、年配の社長が試すような「したり顔」で私を見下ろしていました。
なにやら期限を切られたようです。
が、社長が言った言葉がよく聞き取れませんでした。
何に間に合わせたらいいんですか?とも聞けません…。
(-_-;)うずき?
頭の中はパニック状態でしたが、なんとかしなければなりません。
「はっ、はい!」
返事だけがいいのが私の取り柄ですから、ガサガサと書類をかき集める仕草をしながら仕事をするフリをしました。
家に帰ってから調べましたよ。卯月(うづき)とは…!
「そんな事より仕事しろ」と言われそうですが気にしません。
どうぞ、ご覧ください(^^♪
そもそも「卯月」って何月なのっ?
みなさんはもうご存知だと思うんですが、
「卯月」とは4月のこと
を指します。
4月を昔風に言った表現で、
・4月の和風月名(わふうげつめい)
といった言い方もします。
そもそもは旧暦の4月のことを「卯月」と言い表していました。
この旧暦は私たちが普段使っている新暦とは約1ヶ月ほどズレがあるんです。
しかし、現在の新暦でも同じように4月を「卯月」と表現します。
「旧暦の4月(本来の卯月)」といえば、新暦でいうと
4月の終わりから6月上旬のこと
になりますので、若干の季節感のズレはあります。
その辺りを理解して、時候の挨拶などや季語なんかにも意識を向けると、ちょっと生活が豊かになる気がしてきましたよ。
今時なら、戦艦の名前であったり、オンラインゲームのキャラクター名なんかにも起用されたりして、若い方にも聞きなじみはあるかと思います。
“卯月”の由来や意味は諸説あって謎だらけ・・・
さて、「卯月」が、4月という事はわかりましたが、なぜそういわれるようになったかはまだわかりません!
由来を調べてみましょう。読み終わるまで1分かかりませんよ♪
由来にはいくつか諸説あって、それをすべてご紹介しますね。
卯の花とは、ユキノシタ科のウツギ属の空木(ウツギ)の別名のことです。※この段落冒頭の写真が空木とその花です。
ユキノシタ科の落葉低木で、この木の花は昔から初夏のシンボルとされてきました。
小さくて白いふっくらとした蕾が米粒を連想させるのだそうです。
旧暦の4月と言えば、今でいう5月ごろですので、これから田植えをする季節です。
この花が咲き始める月として名づけられたとすれば、ぴったりなわけですね。
ちなみに、こちらが一番有力とされています。
この説でもやはり田植えの時期であるからということですが、「植月」から「卯月」になったのにはやはり「卯の花」が関係しているのでしょうかね。
もともと「う」という音が「初めて」や「産まれる」の頭文字である「う」から転じたという説です。
こちらは、1年のサイクルの始めの月という観点から、付けられたのではないかと言われています。
たしかに、言われてみれば「4番目」という共通点はあります。
でもでも、だとしたら、どうしてほかの月には干支が当てられたものがないのかという不思議が生まれますが、どうなんでしょうね。
つまり、由来としては「卯の花が咲く月」であるから「卯月」になった、というのが一番の有力説なんです。
でもね、まだ卯月ミステリーの最大の「謎」が残されているんですよ!
卯月最大のミステリーとは!?
ちょっと大げさですか?(^^;)
でも私の中で盛り上がっているのでこのテンションでいきます!
卯の花という名前の由来についてなんですが…
この「卯の花」という名前がついたのは、卯月に咲くからだというんです。
ちょっと待ってください、「卯月」の名前が付いたのは卯の花が咲く月だからでしょう?
それなのに、卯月に咲くから「卯の花」とおっしゃいますか。
いやいや、卯の花が咲くから「卯月」なんですよね?
どっちが先で、どっちが後なのかゴチャゴチャじゃないですか!
まるで始まりと終わりが結びついているメビウスの輪みたいですね(^_^;)
あぁ、謎です。最大のミステリーです。
結局、「卯月」の名前の由来は謎のままでした。
どの説も決まり手がないというか、どこかに何かしらの矛盾が生じているんですよね。
そんなことも含めて太古のロマンなんでしょうけれど♪
卯月の異名 全部見せます
さてここで、気分を変えまして、4月の異名をズラリと勢ぞろいさせてみますね。
【4月の異名勢ぞろい】
卯月(うづき)
建巳月(けんしげつ)
孟夏(もうか)
卯花月(うのはなづき)
得鳥羽月(えとりはづき)
木葉採月(このはとりづき)
夏初月(はつはづき)
夏端月(はつはづき)
花残月(はなのこりづき)
維夏(いか)
陰月(いんげつ)
槐夏(かいか)
乾月(けんげつ)
乾梅(けんばい)
圉余(ごよ)
始夏(しか)
修景(しゅうけい)
首夏(しゅか)
純乾(じゅんけん)
純陽(じゅんよう)
小満(しょうまん)
初夏(しょか)
新夏(しんか)
正陽(せいよう)
清和(せいわ)
清和月(せいわづき)
跡踵(せきしょう)
仲呂(ちゅうりょ)
鎮月(ちんげつ)
麦秋(ばくしゅう)
乏月(ぼうげつ)
余月(よげつ)
六気(りくき)
六陽り(くよう)
立夏(りっか)
引用URL:月の名前(暦月の別名・異称)
気になる異名、ありましたか?
4月だけでこんなたくさんの別名があるんですね。個人的には4月というとこの映画を思い出してしまいます。
4月のふんわりした空気を閉じ込めたような映画です。
さて、この中にある異名から私が好きな個人的なベスト5(私的主観)をご覧ください(^^♪
ひな鳥の羽が生え変わる月という意味です。
巣立ちの時期が近いということでしょうか。
なんだか嬉しいような寂しい気持ちにもなります。
暖かくなって草木が成長し、いい気配が満ち始めることから小満といいます。
幸せな気分になりますね。
ほとんど散ってしまった桜の季節で、山あいや、北の寒い地域に残る桜のことです。
綺麗な響きですよね。
春分と夏至のちょうど真ん中に立夏があります。暦の上で夏が始まるので立夏というのですね。
わかりやすいです。
麦の穂が黄金色に輝いて見える収穫時期のことです。初夏になりますね。
私はビールのイメージが強いです(^^;)
「卯月」それは夏の季語
ここまでお読みいただければお分かりかと思いますが、「卯月」は4月だけど、夏の季語なんですね。
旧暦で4月下旬から6月ごろといいますから、今の季節感にあてはめると、なるほど初夏になります。
「卯月」を季語に使った俳句を、ひとつご紹介して締めとさせていただきますね♪
「溜池に 蛙(かわず)闘ふ 卯月かな」夏目漱石
夏目漱石は愚陀仏庵(ぐだぶつ)という俳号を持っていて、俳句もたくさん作っているんですね。
「ため池の近くを散歩していたら、蛙同士が争いをしていて面白くて眺めていました。それを見ていたら、もう初夏なのだなと気付かされました」
意味はこんな感じでしょうか。漱石らしい、ユーモアを感じますね。
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