ノウゼンカズラは植えてはいけないってホントですか?
一部は迷信ですが、庭に植えると実害があるのは事実です。
夏から秋にかけて、赤やオレンジの大きな花を咲かすノウゼンカズラ。
どこかで見かけて心を奪われ、家の庭に植えたくなる人も多いはず。
しかし、悪い噂を耳にすると、植えようかやめようか迷ってしまいますよね?
そこで、ここでは
- ノウゼンカズラを植えてはいけない理由
- ノウゼンカズラを安全に自宅で育てるコツ
こんな情報を植物全般に興味がある私がご紹介します。
ノウゼンカズラを植えてはいけない6つの理由
ノウゼンカズラを植えてはいけないと世間で言われる理由が、この6つです。
- 「縁起が悪い」と信じる人がいるから
- 「毒がある」と信じる人がいるから
- 建物の外壁を傷めるから
- ツルがめちゃくちゃ伸びて庭木を覆い尽くすから
- こぼれ種でどんどん増えるから
- 一度植えたら根絶するのが難しいから
前半2つは完全に迷信ですから、適当に読み飛ばしてください。
後半の2つは実際に害が及ぶ事実なので、よく読んでノウゼンカズラを植えるかどうか判断されてください。
「縁起が悪い」と信じる人がいるから
ノウゼンカズラは、ツルで伸びるタイプの木。
ツルは他の木や柵などに巻き付いて伸びていきます。
昔の人はこうした「巻き付いて伸びる草木」を
と解釈し、不吉で縁起が悪いと信じていました。
バカバカしい迷信であり、一笑に付したくなりますが、今でもこの考えが残っている年配の方もいらっしゃいます。
もし、両親や義両親と同居していて、庭にノウゼンカズラを植えたら
なにやってんの!縁起が悪いじゃない!
と怒られたり、勝手に抜かれてしまうケースもあるとか……。
「毒がある」と信じる人がいるから
ノウゼンカズラには毒があると以前は信じられていました。
その説の出どころは、江戸時代の学者である貝原益軒の著書のこんな一節。
花上の露、目に入れば目暗くなる
現代文に訳すと、「花の汁が目に入ると失明する」と警告する内容なんですね。
ノウゼンカズラの全草(特に花の蜜)には「ラパコール」という毒性の成分が含まれているのは事実。
しかし、現在ではその毒性を否定する説が支持されています。
その証拠に、かのウィキペディアにも心強い以下の一文が見つかりました。
中には「ノウゼンカズラの花を触った手で目をこすると失明する」などとする物まである。しかし実際には無毒であり、少なくとも言われてるような簡単に失明事故を起こすような強毒性は有していない。
よってノウゼンカズラ有毒説も迷信のひとつだというのが、現在の定説。
そんなワケでノウゼンカズラの毒性は気にする必要はまったくありません。
ただ、長年(一節によると1970年頃まで)に渡って、「ノウゼンカズラ=毒」の誤った説が植物図鑑や百科事典で「れっきとした事実」として記載されていました。
そのため、自宅の庭にノウゼンカズラを植えてしまうと、近所の人から
毒があるのに非常識ですよ、さっさと切ってください!
と苦情が入る恐れも……。
一定の年齢を越えると、それまでインプットされた情報が更新される望みは薄くなります。
ご近所にうるさ型の住人がいる場合は、気をつけたほうがいいでしょう。
建物の外壁を傷めるから
ノウゼンカズラは茎や幹から「気根」を出して、建物の外壁(または他の樹木)に取り付きます。
気根とは、茎や幹から空気中に伸びる「根」のこと。
普通は土の中に伸びる根がノウゼンカズラの場合、外(空中)に伸びるんですね。
この気根が建物の外壁に文字通り「根を張る」ため
- 外壁に跡が残る
- 外壁に穴が空いて雨が染み込む
- 外壁についた気根が取れない
といった被害が出るケースは珍しくありません。
長年ノウゼンカズラを壁に這わしたあと除去しようとしても、なかなか取れなかったり、跡が残ったりして大変だとか……。
外壁がボロボロになって塗替えが必要になったという声も聞かれます。
素っ気ない家の壁にノウゼンカズラが取り付いた様子は一見美しいですが、あとあと
失敗したなぁ、植えなければよかった……
と後悔することになりかねません。
ツルがめちゃくちゃ伸びて庭木を覆い尽くすから
ノウゼンカズラのツルは外壁だけではなく、家の庭に生えている他の樹木にも取り付きます。
取り付かれた方の樹木は、日光不足になり、最悪枯れてしまうことも……。
手入れをせずに放っておくと、やがては隣家の庭まで進出してしまうでしょう。
家の屋根の高さはゆうゆうと追い越して、電信柱や電線まで伸びてしまう恐れもあります。
そのため一年の間に何度か剪定する必要があり、非常に手間がかかる点も敬遠される理由のひとつです。
こぼれ種や地下茎でどんどん増えるから
ノウゼンカズラの花が咲いたあとにはエンドウ豆のような実がつきます。
これが割れると小さな無数の種が地面へと広がります。
一般的にノウゼンカズラの種は出回りませんが、毎年のように種をつけ、それがこぼれ種として芽生えることも……。
また、地面の下で「地下茎」を旺盛に伸ばすため、株から離れた場所からある日突然ピョコッと新芽が顔をだすことも……。
こんな場所に植えた覚えはないのに……
と、いつの間にか株数が増えてしまい、庭がどんどん侵食される恐れがあります。
一度植えたら根絶するのが難しいから
ノウゼンカズラが邪魔になったから、株を根本から抜いたとします。
しかし、それで一件落着とはいきません!
地面に残った地下茎は生きており、離れた場所から何食わぬ顔で芽を出すでしょう。
地下茎は目に見えませんが、庭の全域まで勢力を広げている可能性があり、塀の向こう側から芽を出すことだってあります。
一度植えたが最後、ノウゼンカズラを根絶する戦いに終わりは見えません……。
安全にノウゼンカズラを自宅で育てる3つの鉄則
ここまで読むとノウゼンカズラを家で育てるのを尻込みしてしまうでしょう。
しかし、あれだけ美しい花を諦めるのはもったいなさすぎます。
この3つの鉄則さえ守れば自宅でも安全に育てることができますよ。
- 地植えは諦めて鉢植えにする
- むやみに触れない
- 子供やペットに触らせないように管理する
地植えは諦めて鉢植えにする
コントロール不可能な旺盛な繁殖力や、家の外壁や他の樹木から守るには、地植えではなく鉢植えにすればすべて未然の被害を防げます。
鉢植えならツルの管理(剪定)も楽ですし、小さく育てれば隣近所の注目を集めることもないでしょう。
もし不要になったときも処分が楽で、地下茎が庭に残る心配も一切無用です。
むやみに触れない
ノウゼンカズラには失明するほどの強い毒性がないのは事実ですが、微量でも毒を含んでいるのも事実……。
ジャンル的には「有毒植物」の扱いになります。
実際、花の汁にふれるとかぶれたり、目に入ると炎症や腫れを起こす危険性があります。
ですから、ノウゼンカズラに対しては
- 剪定などで触れる際には手袋を使う
- 素手で触れたあとに目をこすったりしない
といった点には注意が必要です。
特に肌が弱い人は気をつけたほうがいいでしょう。
子供やペットに触らせないように管理する
わずかでも毒のリスクがあるものを子供やペットのそばに置くのは不安ですよね?
かといって、注意したところで聞く耳をもつはずがありません。
ノウゼンカズラを植えた鉢は、子供やペットが触れられない場所に隔離しておくのが一番です。
まとめ
- ノウゼンカズラには迷信と実害の両方がある
- 「失明するほどの毒がある説」は今は否定されている
- ツル性なので根拠のない迷信から忌み嫌う人がいる
- 壁や他の樹木を傷める恐れがある
- 繁殖力が旺盛で庭を覆い、かつ根絶が難しい
- 鉢植えにすれば安全に育てられる
数ある樹木のなかでも扱いが難しく、ノウゼンカズラを植えてはいけないと噂されるのも納得です。
ただ、毒性についてはオーバーに伝えられていただけでした。
多少の毒はあるのは事実ですが、そのせいで庭に植えるのを避けるのはそれこそオーバーな反応といえます。
名声・名誉・栄光など素晴らしい花言葉をもつノウゼンカズラ。
ガーデニングの中級者以上に向いた植物とは思いますが、この花の美しさを私も庭で鑑賞したくなってきました。
コメント
49年前に嫁いだ時には、もう立派なオレンジ系の花を付けていた庭のノウゼンカツラ。毎年、花の時期を待っていました。昨年、夫を癌で亡くした時も可憐に咲き誇っていました。
今年、子供の手首程になった根元の草を抜きながら、次の苗を植えようとネットで検索しました。
白系と紫系の2本を植えて、夫と私がこの地に生きて、郵便局員、農業試験場の職員として、一生懸命に生きた証を後にこの地に住むであろう人達に伝えようと思います。
思い入れのある植物なんですね。記事内ではネガティブなことも書いてしまいましたが、私も個人的には好きな植物です。近所でも植えている家がチラホラあり、もっと魅力が広まればいいなと思っております。(この記事が誤解を解く助けになれば幸いです)